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栗村修のワールドツアーへの道

KURIMURA's Blog

Jヴィンゲゴーの強さを考察

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フランスで開催中の「第110回 ツール・ド・フランス」は、最終週に突入し、前週終了時点でたった10秒だったJヴィンゲゴー(総合1位)とTポガチャル(総合2位)の総合タイム差は、この2日間だけで7分35秒まで拡大し、予想外のことが起きなければJヴィンゲゴーの大会2連覇はほぼ確実という状況となって参りました。

二人の均衡が破れたのは、火曜日に開催された今大会唯一の「個人タイムトライアル」ステージでした。

ステージ優勝を飾ったJヴィンゲゴーとステージ2位となったTポガチャルのタイム差は、22kmの距離で1分38秒差で、平均速度で比較すると2km/h近い差がついていたことになります。

更にステージ3位だったWファンアールトとの平均速度は3.3km/hと大きく、このレベルのレースの1位と3位の選手の差とは思えないほど圧倒的な勝利でした。

そして、非常に残念なことではありますが、近代の自転車ロードレースに於いては、「圧倒的な力」で勝ってしまうと不正行為を疑われるという、負の方程式ができあがっている側面があります…。

私自身も、解説者をはじめた2000年以降、伝える側としてドーピング関連違反によるマイヨジョーヌの剥奪を実に8回も経験してきました…(そのうち6回はLアームストロング氏)。解説者歴24年の中で実に3分の1に相当します。

JヴィンゲゴーやTポガチャルといった現代のクリーンなチャンピオンがインタビューの中で語っている様に、「このスポーツの遠くない過去に起こったことを考えると現代の我々が疑われるのは仕方がない」というのが、まだ償いの時間が終わっていないということを表しているのかもしれません(Jヴィンゲゴーが所属するユンボの前身はラボバンクですし、Tポガチャルが所属するUAEのCEOはMジャネッティ氏)。

ですが、圧倒的に強かったり、パワー値などの数字を過去と比較するだけで、脊髄反射的にドーピングだ!と括ってしまうのもどうかと思いますので、今回は現代のチャンピオンの強さの秘密というものを、ものすごく簡潔に考察してみたいと思います。

◯ドーピング違反とは禁止リストに載っている「薬品」や「やり方」をつかう行為

◯スポーツには他にも多くのルールがあり違反すると処罰の対象となる

◯逆にいうとルールに抵触しなければすべて合法となる(普通のひとが法律に従って生活しているのと同じ)

◯あらゆるスポーツに於いてルールに抵触しないやり方で最大公約数を目指す戦いが日々繰り広げられている

◯現代のサイクリングに於いては「機材」「空力」「食事・栄養」「運動生理学」「トレーニング」「各種スキル・テクニック」「戦略・戦術」「コースの研究」「ドーピングリストに抵触しないが効果を発揮する物質の使用」などが日々高次元で研究され続けている

◯競技力の差は「選手個体の能力」×「上記項目」の差でほぼ導きだせる

◯特定の選手やチームが圧倒的なアドバンテージを発揮する時というのは単純に上記要因のどれかに差が生じている状態(もちろんルールの範囲内で)

ドーピングやメカニカルドーピングはルール違反なので処罰の対象ですが、概念的にはスポーツの根源的欲求のひとつである「より速くより強く(勝ちたい)」の延長線上であり、単にそれらがルールブックに載っているかどうかで良し悪しが判断されています。

そして、現代は20年前とはすべてが違い、10年前とも違い、5年前とも違い、昨年とも違い、来年には新たななにかが開発されていることでしょう。

我々日本人には「スポーツマンシップ」という美しい価値観が備わっているので、若干違和感を覚えますが、地域が変われば価値観も大きく変わります。

ユンボとJヴィンゲゴーの強さは、シンプルに「選手個体の能力 × 上記項目の差である」ということです。

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