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栗村修のワールドツアーへの道

KURIMURA's Blog

ツール・ド・フランスを観て思うこと


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現在、世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」が開催されています。

私自身、「ツアー・オブ・ジャパン」の大会ディレクターの職に就いてから今年で3大会(大会副ディレクター時代を含めると5大会)を終えたわけですが、回を重ねるごとに、本場の自転車ロードレースの偉大さを改めて実感している次第です。

なかでも「ツール・ド・フランス」の巨大さと、その運営能力の高さというのは本当に驚異的です。

100年を超える歴史が創りあげた文化がベースとなっているので当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、自転車ロードレースがまだメジャースポーツになりきっていない国にいる我々には簡単に真似ることのできない環境がそこにはあります。

それでは具体的になにが大きく違うのでしょうか。パッと思いつく項目をいくつか挙げてみたいと思います。

◯道路使用
地域住民などが生活や仕事をするために使う公道を一時的とはいえ独占使用することは簡単なことではありません。日本で公道をつかったレースを開催する場合、基本的にコースに接するすべての民家や企業に対して説明にまわる必要がありますが、全長約3,500kmにも及ぶルートを持つ「ツール・ド・フランス」がその様な作業を完璧に行っているとは到底思えません。フランスでもレース開催に対して不満を持つ人は一定数いるでしょうが、それでも大半の人たち(自治体や地元警察含む)は「ツール・ド・フランス」が街にやって来ることを誇りに思っており(むしろ誘致合戦が繰り広げられている)、この差が、公道を使用することのハードルを下げ、逆に多くのボランティアが自らの意志でレースの運営をサポートしてくれることで、主催者側の作業負担は大幅に軽減されることになります(主催者側のマンパワーや予算をもっと違うことに使えるようになる)。日本で自転車ロードレースを開催する場合は、主催者側が持つリソースの多くがこの項目で壊滅的に消費されてしまっています…(スタジアムスポーツには基本的に必要のない項目)。

◯中継体制
自転車ロードレースはスタジアムスポーツではないので、特に「ツール・ド・フランス」の様なラインレース(スタート地点とフィニッシュ地点が別の街)の場合、ヘリコプターやオートバイを駆使した移動体からの中継体制が非常に重要であり、恐らく「ツール・ド・フランス」が放送関係にかけている予算というのは、「ツアー・オブ・ジャパン」の全体予算(放送関係予算ではなくて総予算)の何倍にも達していると思われます(ツアー・オブ・ジャパンの放送関係予算と比較すると何十倍もの開きがあるでしょう…)。民間スポンサーを獲得する際(特に億単位の巨大なスポンサー)、大会を観るひとの数がとても重要であるのは誰にでもわかることであり、中継体制を拡充させ「膨大な観るひとの数を確約」させないと、スポンサー収入や放映権料のアップは見込めないことになります。基本的に固定カメラのみでゲーム全体を追えるスタジアムスポーツに比べると、自転車ロードレースはレースの基本部分を伝えるだけでも非常に多くの労力をかけなくてはならず、「ツール・ド・フランス」にはその特殊なノウハウと高いスキルが恐ろしいほど高いレベルで積み上げられています。現状、日本国内に於いて質の高い自転車ロードレースの中継を実施できるひとの数は非常に限られています。

他にも多くの違い(差)がありますが、まずは上記2項目を改善するだけでも、自転車ロードレースの開催環境(特に国際レースの様な魅せるレース)は大きく改善するはずです。

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